外貨預金とFXの比較

 日米企業との紛争題材がふんだんに出ている。  このほど韓国特許庁が中小企業向けに出した資産運用 ハンドブック「−特許紛争事例から学ぶ− 効果的な特許管理のための10大戦略」は、日米企業などとの紛争を題材にした具体的な事例をもとにまとめたもので、特許戦略を簡潔に伝授した「秀作」である。日本特許庁も韓国を見本に、分かりやすい戦略ノウハウ本を出してはどうだろうか。  まず、10の戦略を紹介したい。  戦略1 自社製品関連の特許動向は常に把握しなければならない  戦略2 相手の無分別な侵害訴訟に対しては断固とした対応を  戦略3 製品の市場発表よりは特許出願が先決  戦略4 個人向け国債 はない  戦略5 海外出願にも締め切りがある  戦略6 特許権の買い入れも方法である  戦略7 OEM生産時は特許紛争の責任所在を明確に  戦略8 コア技術人材はいかなる場合にも優先的に保護すべし  戦略9 協議段階では技術の全貌を明らかにするべからず  戦略10 営業秘密よりは特許出願をまずipo  特許の取得、管理、保護に不慣れな中小企業向けだから、戦略1、3、4、5などのような初歩的な戦略伝授もあるが、そのほかの戦略は大企業にも大いに参考になるものが多い。すべての戦略にいくつもの具体的な事例を紹介しながら解説しているので、よく理解できる。 誤訳をついて相手の特許を無効化  たとえば、戦略6では、 のLG電子がアメリカで特許を1件取得後、その周辺技術に関する特許5件を他社から買い取り、ライバル企業の進出を防止した後で輸出に踏み切った事例を紹介。「周辺技術の特許を積極的に買い取ることで法的地位を確固たるものにして、特許紛争で有利な位置を確保する」ことを伝授している。  また、戦略2では、サムスン電子と日本の半導体企業との紛争を取り上げた。日本企業は トランジスタに関連する米国特許を、サムスン電子が侵害したと主張した。これに対しサムスン電子は、「日本企業の出願段階で、先行技術公開義務違反の誤訳を積極的に探し出し、法院に提示することで日本が持っている米国特許を無効化させた」と解説。  「相手の特許の出願手続き上の瑕疵(かし)を探し出し、無効化させるほど積極的な対応をとることで不利な特許紛争を勝利に導けた」と伝授している。最近、日本企業では、外国への出願案件の誤訳が権利主張の際に大きな抜け穴になっている事例が問題化しており、これを逆手にとった戦略である。

コア技術の流出防止策も伝授  また、自社のコア技術が他社(他国)に流出しないように「研究開発の成果に適当な補償体系を用意し、技術人材に対する処遇を改善してコア人材が流出しないように保護する」とある。韓国企業は、日本企業のコア技術やノウハウを取得するために、法外な対価を出して日本の人材を取り込んだ時代があった。しかしいまや韓国は攻守ところを変え、守りの体制に入ったことを示している。  一方、韓国情報院は今年の春、「産業スパイ識別要領」というパンフレットを出し、先端技術分野のセキュリティについて具体例を入れた対策を伝授している。外国からの情報収集方法として「誘導尋問」「盗聴」「無断侵入」などの事例を紹介し、社員の「行動守則」もあげている。  知財をめぐって、国際間で熾烈な競争になってきたことを実感させる韓国当局の「戦略伝授」は、日本も大いに参考になるものだ。  なお筆者は、これらのガイドブックの日本語訳をたまたま入手したものだが、韓国特許庁のHPでも公開されているという。

荒井私案で示された相互認証の提唱  9月13日に開催された「日経知的財産フォーラム2004」の基調講演で、荒井寿光・内閣官房知的財産推進事務局長(元特許庁長官)が、アメリカで取得した特許を自動的に日本で認める(同じように日本で取得した特許もアメリカで自動的に特許となる)「特許の日米FTA(Free Trade Agreement、自由貿易協定)」の創設を提唱して注目を集めている。  荒井私案によると、日米両国に出願した特許案件は、どちらかの国で特許と認められれば6ヶ月の補充審査をした後、自動的に相手国でも特許とするという案である。  これが実現すると、さまざまなメリットがある。まず、同じ特許案件を日米双方で審査していたものが、どちらか一方の国だけの審査になるので両特許庁にとって二重審査の手間がなくなる。それだけ全体の取得時間が短縮できるし、日米双方の審査のばらつきもなくなる。しかし最大のメリットは、日本企業にとって知的財産の真の国際競争力を獲得する機会になることだ。  というのも、アメリカには、審査請求制度がないから、日本特許庁に出願した際に生じる出願から審査請求までの期間がなくなる。出願から審査まで実際に要した時間だけが、審査にかかった時間になり、それだけ特許権利の取得が早くなる。  これまで、同じ特許案件を日米で同時期に出しても、ほとんどがアメリカで先に取得されている。多くの日本企業にとって、アメリカで特許を取得することが最大の目標になっていることを考えると、FTA効果で権利取得が早くなることは大歓迎である

日米審査官の得意分野を相互補完  日本特許庁の審査官のレベルは世界トップクラスであり、特に日本企業が伝統的に強いエレクトロニクス分野などは間違いなくトップだろう。それと同じようにダントツの研究開発力を誇っているアメリカのバイオ関連特許案件などの審査では、アメリカ特許商標庁の審査官のレベルは文句なしにトップである。  このように日米の特許庁が、それぞれ得意の分野で相互補完する効果も出てくることになれば、アメリカにとってもメリットがある。エレクトロニクス、光学、印刷機などの日本語文献が多数ある技術分野の審査を日本に任せることができるからだ。審査官の中で博士号を取得している人は、日本特許庁では数名程度だがアメリカ特許商標庁には約500人いると聞く。こうした人的資源を有効に使えることは、日本の出願者にとっても有利になる。  このような国際的な相互認証の制度は、1989年から商標のマドリット協定議定書ですでに実施され、成功している。商標を世界知的所有権機関(WIPO)事務局に国際出願すると、方式審査を経て国際登録される。拒絶理由がなければ指定した締約国で1年以内(国によって18月以内)に自動的に国内商標登録と同等の効力を有するという条約だ。WIPO事務局と各国特許庁の相互認証である。この協定で、外国での商標の保護は、「簡単、迅速、廉価」が定着した。  先ごろ政府が策定した「知的財産推進計画2004」でも、「日米欧3極特許庁間で特許の相互認証の実現をはかる」ことを掲げているが、その過程で先に日米特許FTAを実現すれば、相互認証の先行実施となり3極相互認証の早期実現の道筋をつけることにつながるだろう。

政府は企業の要望にこたえて早期実現を  特許庁は、荒井私案に対し、「6ヶ月以内の補充審査は無理ではないか」とか「米国から日本に出願する案件数が、日本から米国へ出願する案件数に比べて少ないのでバランスがよくない」などの課題をあげている。しかし、早期審査の実績を見れば6ヶ月以内の補充審査は十分可能だし、日米間の出願件数のアンバランスは両国に出願されていることがFTAの条件であるから相殺されるはずだ。  アメリカ特許商標庁も現状よりは負担が軽くなるし、アメリカの出願人のメリットも大きいので、もしアメリカから何か指摘してきても、話し合いで解決できる課題だろう。  企業はこの荒井私案を大歓迎しており、政府は課題を乗り越えて実現してほしい